槵觸（くしふる）神社の参道（さんどう）の階段前を左に進んで2分ほど、槵觸峯（くしふるたけ）の山麓に天真名井（あまのまない）が鎮座しています。天真名井（あまのまない）は、樹齢約三千年とも云われるケヤキの御神木（ごしんぼく）に囲まれ、その下には神代川（くましろがわ）が流れています。天真名井（あまのまない）は、天孫降臨（てんそんこうりん）に際して当地に水が無かったため、天村雲命（あめのむらくものみこと）が高天原（たかまがはら）に戻り、天真名井（あまのまない）から汲んできた水を移したもので、「三田井（みたい）」の地名の元である三つの井のひとつであると伝えられています。また、湧出する井水（せいすい）は不増不減（ふぞうふげん）の神水（しんすい）として信仰され、高千穂（たかちほ）・槵觸（くしふる）両神社の春秋の例祭（れいさい）では、御旅所（おたびしょ）として神輿（みこし）が安置（あんち）され、神楽（かぐら）が奉納（ほうのう）されています。

また、天真名井（あまのまない）の前の神代川（くましろがわ）の対岸には、木花開耶姫命（このはなさくやひめのみこと）が出産に際して、あまりの難産に堪えられずに抱きついた石とも、豊玉姫命（とよたまひめのみこと）と玉依姫命（たまよりひめのみこと）のお産に因む石とも伝えられる夜泣き石（よなきいし）が祀（まつ）られています。この石に触れると乳幼児の夜泣きが止むとされたため、子供を抱いた若嫁の姿がよく見かけられたともされ、夜に蠢（うごめ）いて村の厄災（やくさい）を知らせたこともあったとされています。